校長室から全校生徒の皆さんに発信します ♪
校長室より「11月前半」の鳩高生への応援メッセージ
高校生活最終章を歩む鳩高生へ
~文化の日と勤労感謝の日に寄せて~
こんにちは、校長の田中です。今回は、青く澄み切った秋空の下、高校生活最終章真っただ中を歩む鳩高生に11月の二つの祝日である「文化の日」と「勤労感謝の日」の持つ意味を改めて考えることで、来し方行く末について考える機会とし、皆さんの歩みに心からエールを送ります。
さて、11月3日の「文化の日」は、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」という趣旨のもと制定されました。ここでいう「文化」とは、音楽や絵画、文学といった芸術作品だけを指すのではありません。私たちが日々生きる中で培ってきた知識・技術・思想、そしてそこから生まれる多様な営みそのものが「文化」なのです。皆さんの高校生活を振り返ってみてください。国語の授業で小説や詩などの作品を題材に作者の心情に迫ったり、歴史の授業で過去の為政者たちの考えに触れたり、理科の授業で自然界の法則を解き明かしたり。これら一つ一つの学びは、先人たちが積み重ねてきた知の集積、すなわち「文化」そのものです。皆さんは、これらを吸収し、自分の血肉とすることで新たな視点や思考力を育んできました。それはまさに、皆さんの内なる「文化」を豊かにするプロセスだったと言えると思います。
11月3日の文化の日に関する鳩山町の取り組みを紹介します。この日、鳩山町では、同町文化会館ホールにおいて鳩山町意見発表会、「第11回 言ってんべー・聞いてんベー大会」が催されました。「少子高齢化・高度情報化・グローバル化が進む今日、あるテーマに基づき町民等が自分の意見を発表する機会を設けるとともに、さまざまな立場の人々の意見に耳を傾け、それぞれの意見の違いを互いに認め合う寛容な考え方を通して町民等の交流を図る」ことを趣旨としています。そしてこの発表会には、本校3年生2名が「鳩山の小さい子どもたちへ」と題して、発表者としてステージに立ち、立派に語りつくしました。文化の日が象徴する「自由」とは、まさに皆さんが自らの意志で未来を切り拓く自由であり、「平和」とは、その創造的な営みが安心して行える社会基盤を意味します。皆さんが、これまで高校生活で身に付けた知性、感性、そして人間力こそが、これからの社会をより豊かにしていく原動力となることを信じています。
そして、11月23日の「勤労感謝の日」は、「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」ことを趣旨としています。この日は、単に働いている大人たちに感謝する日ではありません。私たちが日々生きる上で享受しているあらゆるものが、誰かの勤労によって支えられていることに気づき、感謝する日なのです。皆さんの高校生活も多くの人々の「勤労」の上に成り立っていました。毎日の皆さんと顔を合わせている先生方、朝のSHRから授業、面談、学校行事等、日々まさに勤労に従事していました。そして皆さんが快適に学校生活を送れるよう、校舎の管理や事務作業にあたってくださった職員の方々がいました。普段、当たり前と思っていた日常は、学校だけでも大変多くの方々の勤労によって成り立っていました。そして、皆さんは大変立派です。なぜなら皆さんは、こうした縁の下の力持ち的な役割をしてくださっている方々にきちんと感謝の言葉を伝えることもできるからです。そうした皆さんの温かい心に、私は心から感謝しています。そして忘れてはならないのが、家族です。何よりも皆さんが安心して学業に専念できるよう、日々の生活を支え、精神的な支えとなってくれている家族への感謝を忘れないでください。
次に、皆さんの「勤労=努力」にも目を向けてみましょう。これまで皆さんは多くの人々の支えの中で、自分自身の「勤労」、すなわち日々の「努力」を積み重ねてきました。苦手な科目を克服しようと粘り強く勉強したこと、部活動で目標達成のために自分を追い込んだこと、文化祭や体育祭でクラスや学年全体を盛り上げるために準備段階からいろいろなところへ奔走したこと、これらすべてが皆さんの「勤労」であり、努力の証です。高校3年生の今、皆さんはこれまで以上に明確な目標に向かっています。すでに4月からの進路先が決まった人もいれば、これからが本番の人もいます。どんな道を選ぶにしても、そこには必ず「努力」が伴います。その努力、挑戦の過程で培われる忍耐力、課題解決能力、そして何よりも「やり抜く力」こそが、皆さんの未来を切り拓くかけがえのない財産となります。もちろんその「勤労」を支えてくれた、また、支えてくれている方々への感謝の気持ちを忘れないでください。感謝は人を強くし、より良い行動へと導く力があります。感謝の気持ちを持つことで、皆さんの努力はさらに実り多いものになると確信します。
鳩高生のみなさん、鳩山高校の正門から生徒玄関、階段、廊下、そして自分の机、・・・。普段、当たり前と思っているものにも感謝と愛情を注いで11月の歩みを進めて行きましょう!応援しています。
追伸
次回、11月後半の応援メッセージは、11月17日(月)にアップします。このホームページに集いましょう!。
校長室より「10月後半」の鳩高生への応援メッセージ
鳩山高校での高校生活、日々大切なものを習得しています!
こんにちは、校長の田中です。10月6日(月)、日本を元気にするニュースが飛び込んできました。2025年ノーベル賞、生理学・医学賞を坂口志文さん(大阪大学教授)が受賞。一日おいて10月8日(水)にはの北川進さん(京都大学教授)が化学賞を受賞。2賞で日本人が選ばれる快挙となりました。2賞同時受賞は大村智さん、梶田隆章さんが選ばれた2015年以来10年ぶりで、お二人の受賞のテーマはいずれも教科書に載るような分野の基礎を作った研究とのこと。受賞候補者として長年、名が挙げられており、待望の受賞となったようです。
こうしたニュースに触れながら鳩山高校の教育活動を振り返ってみました。入学当初から日々の学校生活をとおして「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」という教育基本法に掲げる取り組みが、生徒の大きな成長というかたちで実現しつつあると受け止めています。今回の応援メッセージは敢えて構成など気にせず、思いの向くままに書き綴ってみたいと思います。ということで徒然草ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくり」それでいてまとめは「あやしうこそものぐるほしけれ」とはならないものにしたいと思います。
さて、ノーベル賞受賞の話題から入りましたので、唐突ですが、鳩高生に質問です。日本初のノーベル賞受賞者は誰でしょうか?一般教養として知っておいて損はない知識です。少し時間があれば、出てきそうであれば、みなさんの知識の引き出しをあちこち探ってみてください。
何らかの解答を用意してから★★★以下を読んでもらえたらと思います。
★★★
「湯川秀樹」。はい、正解です。1949年、湯川秀樹はノーベル物理学賞を受賞しました。その内容は、「中間子理論」というものです。専門家の言葉を引用します。「この世に存在する全ては原子から成り立ち、その原子の真ん中にある原子核の中にプラスの電気を持つ陽子(ようし)と電気を持たない中性子が存在しています。そして、このプラスの陽子同士が何故結びつくのかが、研究者たちの長年の課題でした。そこで、湯川秀樹は中性子の中にマイナスの電気を持つ中間子の存在があって原子核を構成しているという発表をしたのです。」これが長年の課題を証明する根拠として認められ、ノーベル物理学賞、受賞に至ったのです。この湯川博士、相対性理論で有名なアインシュタインとも親交が深い方でした。天才同士、気が合うのでしょうね。驚くことに湯川博士は、理論物理学の大家であるだけでなく、思想家であり、歌人としてもその名が知られていたそうです。
湯川博士の著書、『目に見えないもの』(講談社学術文庫 1946年)は物理学者であると同時に、思想家、湯川秀樹を世に知らしめるものであったといいます。この著書の中で、次のように言っています。「教養とは、何らかの知識の習得を目指すことだが、その対象が何であるかよりも、知識の習得によって個々の知識を超えた何かを得て、それが自分自身の中に良い変化をもたらすところに主眼がある」と。学ぶことによって教養を深めることは、「目に見えない大きな宝物」を得るというわけです。余談ですが、福山雅治主演のガリレオ・シリーズ。福山雅治演じる天才物理学者の名前は「湯川先生」ですが、誰もがそう思うように当然のごとく、この天才物理学者の名前から拝借したわけですね。
ところで「目に見えないもの」の大切さを語った有名な台詞と言えば、サン・テグジュペリの『星の王子さま』だと思います。賢いキツネが王子さまに語った台詞を引用します。「それでは、大事な秘密を教えてあげよう。とても簡単なことさ。それはね、ものごとはハートで見なくちゃいけない、ってことなんだ。大切なことは、目に見えないからね」。また、王子さまは人が何かを愛するということは、自分がそのものに深く関わった結果であることを学びます。自分の星に咲いた見栄っ張りでわがままなバラの花の要求に応えてあげる、そのことが、いつの間にか自分の中に、そのバラへのかけがえのない愛情となって心の中に育っていることに気づきます。そして王子さまは言いました。「自分が愛する花のいる星は小さすぎて地球からは見えない。しかし、その花がどこかにあると思うからこそ、星空を美しいと感じるのだ」と。
湯川秀樹のいう目に見えないものとは、粒子のように小さくて目に見えないものから自分の中にもたらされた良い変化はじめ、幅広くあります。しかし、ここでは分かりやすく「自分の中にもたらされた良い変化」を湯川秀樹の「目に見えない大切なもの」としましょう。そして、サン・テグジュペリが教える「ハート(心の目)でみないとみえない大切なもの」を星の王子さまの「目に見えない大切なもの」としましょう。1年次、2年次で培った知的・経験的財産を踏まえて、今年度、鳩山高校で展開されている日々の授業、行事を通してクラス、学年の仲間、教職員、地域の方々と触れ合い、「自分中に良き変化」をもたらし、「心の目を養い」今日に至ったと感じています。つまり、みなさんは、鳩山高校での学校生活を通して日々大切なものを習得している、と胸を張ってよいと思います。
鳩高生のみなさん、引き続き、鳩山高校での一日一日を大切にして令和7年度・2025年度、第2学期の歩みを進めて行きましょう!応援しています。
次回は、11月前半の3連休明けの11月4日(火)にアップします。このホームページで会いましょう。
校長室より「10月前半」の鳩高生への応援メッセージ
鳩山高校はどんな学校?もちろん最高の学校です!
~「オアシスの老人」の話が意味するもの~
こんにちは、校長の田中です。令和7年度・2025年度も暦の上で折り返し地点にきました。とは言え2月から家庭研修に入ります。また、2年生までの3月後半の終業式ではなく、約2週間早い卒業式のひどりを考慮すると、ただの折り返しではありません。「一日一日を大切に!」、という言葉は使い古されてはいますが、一日一日、昨日の自分を超えるつもりで学校生活を送ってほしいと思っています。昨日の自分を超えると言っても、頑張ろうと肩に力を入れて四六時中、高い緊張感を保つような生活はNG(No Good)です。進路を決めるような面接試験に臨むときは、もちろん気力・知力・体力等、全集中して臨みますが、普段は肩の力を抜いて、何かにとらわれず、しなやかに学校生活を送ってほしいものです。その学校生活の場、鳩山高校は、生徒の皆さんにとって居心地のよい場所になっていますか?
日々のみなさんの様子をみて、みなさんの話を聞いて、そんな最高の学校になっていると受け止めています。そして、そう思えることが実は大変重要です。なぜ今の場所が心地よく、楽しく、自分の力を最大限発揮するにふさわしい場であると思えることが、重要なのか?それを考えるヒントになりそうな「オアシスの老人」という話を紹介します。
「2つの大きな町に挟(はさ)まれたオアシスに、一人の老人が座っていた。通りかかった男が老人に尋ねた。『これから隣の町に行くのですが、この先の町はどんな町ですか?』。老人はこれに答えずに聞いた。『今までいた町は、お前にとってどんな町だった?』。男はしかめっ面をして言う。『たちの悪い人間が多くて、汚い町ですよ。だから、隣の町に行ってみようと思ったんです』。老人はこう答えた。『お前がそうおもっているなら、隣の町も、たちの悪い人間が多い、汚い町だろうよ』
しばらくすると、さっきの男が来たのと同じ町から、別の男がやってきた。その男はさっきの男と同じように老人に尋ねた。『これから隣の町に行くのですが、この先の町はどんな町ですか?』。老人はこれに答えずに聞いた。『今までいた町は、お前にとってどんな町だった?』。
男はにこやかに答えた。『親切な人が多くて、きれいな町です』。老人はこれを聞いてこう言った。『なるほど。お前がそう思うなら、隣の町も親切な人が多い、きれいな町だよ』。」
この話の教えとして、2人の男は現実を見る姿勢や態度が違っている、という解説がされます。最初の男は現実の汚いところを見ている一方、2番目の男は現実のきれいなところを見ている、と。そういった意識は、物事をどのような姿勢や態度、立場でみているか、関わっているか、という人の数だけ存在します。そしてその物事にどのように関わっていくかも重要だと思います。特に現実の汚い状況を把握しているなら、それを改善するための何らかのアクションを起こしたのか?もちろん一人の力ではどうにもならないことの方が多いと思います。周囲に相談、問題提起して現状の改善に向けて何か一石を投じたのか?その有る無しは大きな違いがあると思います。
私はこんな風に考えています。今の置かれた場所が居心地が悪いのであれば、何か改善に向けて自分が信じるアクションをすべきだと思います。長い世界の歴史の中では、国が荒れて暴動が起こり、クーデターにより政権が倒れて、このままいると命の危険にさらされる、という国もありました。命の危険レベルの高さによっては頑張って何かアクション・行動を起こすこと自体が無謀な場合もあると思います。しかし、今の日本の状況の中で考えれば、様々な改善策、改善方法が考えられると思います。それでも一筋縄ではいかないとは思います。話が途轍(とてつ)もなく大きくなってしまいました。
土俵を学校生活に戻しましょう。一つ言えそうなことは、「オアシスの老人」が教えているように、今、所属しているところの居心地が悪いからと言って、場所を変えたら必ず改善するとは限らないということです。もしかしたらもっと過酷なところかもしれません。そして、再びそこから逃れようとするかもしれません。もちろんこのままでは心が壊れてしまう、というのであればむしろ積極的に場所を変える、逃れる、逃げるべきです。そうでないのであれば、まず、なすべきことは、カトリック修道女である故・渡辺和子さんの言う『置かれた場所で咲きなさい』です。これは、どんな状況でも自分のできることを精一杯努力すれば、必ず成長できるというメッセージです。
鳩高生のみなさんに伝えたいこと。それは、現在、かなり居心地のよい環境にあると思いますが、計画的に自分磨きをしてほしいと思います。鳩山高校在学中に様々な機会、場面で「自ら主体的に行動する人=プレイヤー」としての経験をたくさん積んでほしい、のです。この経験は、いついかなる場所でも『咲ける人』になる原動力となると思います。そして、どこに行ってもにこやかに『親切な人が多くて、きれいな町です』と言える人になると思います。
鳩高生のみなさん、肩の力を抜いて、大きく深呼吸をして、軽やかに、しなやかに、そして笑顔で令和7年度後半を駆け抜けて行きましょう!応援しています。
次回は、10月15日(水)にアップします。このホームページで会いましょう。
校長室より「9月後半」の鳩高生への応援メッセージ
「勉強」と「仕事」は、どこでつながるのか?
~『16歳の教科書』より~
こんにちは、校長の田中です。いよいよ就職希望者は本日から就職試験が始まります。これまで培ってきた全ての力を総動員して乗り越えて行ってほしいと思います。
さて、今回は進路選択を目の前に控えたみなさんにとって、毎日、取り組んでいる勉強と仕事は、どこでつながっているのか?ドラゴン桜、公式副読本である『16歳の教科書』に登場する各界のスペシャリストから学びたいと思いま す。まずは、奇跡のジャズシンガーと呼ばれる綾戸智恵(あやと ちえ)。綾戸さん曰(いわ)く、学校の勉強は、「心の体育」である。学校では頭を鍛えるんじゃなくて、心を鍛えているのよ、と。実際、高校を卒業したら、ほとんどと言ってよいくらいお目にかからない教科・科目の内容もあります。その意味では、確かに「心の体育」、仕事に向かう心を鍛えていると言えそうです。
続いて「渋滞学」を系統立てた西成活裕(にしなり かつひろ)。車や人が渋滞してしまうメカニズムを数学や物理の力で解き明かし、どうすれば渋滞を解消するか考えていこうという学問分野を切り開いた人です。西成さんは、学校の勉強で、「ん?なに言ってんだろう、これ?」って思ったとき、絶対に素通りしない。少しでも引っかかるところがあったら、どれだけ時間がかかっても、自分の力で解決する。キーワードは「なぜ?」。「なぜ」を自分自身に5回問え!』。なぜ、こうなのか?「Aだからだ」。なるほど。それではなぜ、Aなのか?「Bだからだ」。こうやって、「なぜ?」を5回くり返していく。引っかかった原因を、根っこの部分まで掘り起こしていく。もしも3回目の「なぜ?」で答えが詰まったとしたら、それは本質がわかっていない証拠である、と。本質がわかっていなければ、将来、使えないと言っています。続けて、たいていの人は1回の「なぜ?」で終わってしまう。5回くり返す習慣をつけてほしい。そして、この習慣は大人になってからも必ず役に立ちます、と。「なぜ?」を5回くり返すこと、是非、チャレンジしてみてください。一つ付け加えます。5回、深掘る最初の入り口、「ん?なに言ってんだろう、これ?」って思ったとき、絶対に素通りしない。少しでも引っかかるところがあったら、どれだけ時間がかかっても、自分の力で解決するように教えていますが、時間をかけて自分の力でひねり出せなかったら、また、ひねり出したものが自分として納得できる範囲になかったら、是非、身近な人に聞いてみてください。また、先生方に尋ねてみてください。これこそ、勉強を将来の仕事につなげる入口になると思います。
勉強と仕事はどこでつながるのか?もう一人。映画監督の李相日(リ・サンイル)。今年2025年、日本で社会現象となり、8月の時点で邦画(日本映画)実写史上2位の興行収入を記録している『国宝』を制作した監督です。日本の伝統芸能、歌舞伎を題材にした作品で、主演は吉沢亮(よしざわ りょう)。吉沢亮といえば、仮面ライダーフォーゼで少年たちのヒーローになってから、『キングダム』の実写版では秦の始皇帝役を演じ、2021年・令和3年にはNHK大河ドラマ『晴天を衝け』で日本資本主義の父と称され、現一万円紙幣の肖像となっている渋沢栄一を演じた今や日本を代表する俳優です。また、共に高めあうライバル役に今年のNHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』主演の横浜流星が抜擢され熱演しています。
話を戻します。スポットを当てるのは、この映画『国宝』の李相日(リ・サンイル)監督。李相日さんは、今でこそ映画監督、それも功成り名を挙げた大映画監督ですが、高校生の頃は、映画監督になりたいと思ったこともなかったし、そもそも、ものすごい映画ファンというわけでもなかった。特別やりたいこともないまま、自分の将来について深く考えることもないまま、ぼんやりすごしていた、と言っています。それでも大学に入って就職のシーズンになるとのんきにもしていられず、一応、リクルート用スーツを買って、就職活動らしいものをやって終わった、といいます。併行して、「じゃあ、自分はなにがやりたいんだ?」そう自問自答したとき、かろうじて出てきた答えが“映画”だったそうです。それも積極的に「映画がやりたい!」と考えたというより、映画くらいしか思いつかなかった、という感じだったとのこと。でも、どうすれば映画の世界で働けるのかわからない。そこで、とりあえず映画の製作や配給をやっている会社に飛び込んでいって、アルバイトとして撮影現場に入れてもらったことが映画監督、李相日の第一歩でした。この『16歳の教科書』による特別講義は2009年の出版ですから、今から16~17年前の取材によるものです。
鳩高生、刮目(かつもく)せよ!鳩高生のみなさんに知っておいてほしいことは、映画『国宝』の監督、李相日(リ・サンイル)さんは、若いうちから衆にぬきんでて優れた映画エリートという訳ではなかったことです。たしかに30代はじめに、映画『フラガール』で日本アカデミー賞、最優秀作品賞、監督賞、脚本賞を受賞したということにおいては映画エリートとも言えそうですが、思い出してください。「自分は何がやりたいんだ」と自問自答した時、かろうじて出てきた“映画”というものを前にして、アルバイトから始めて、目の前のことに一つ一つ夢中で取り組んできた結果が、今日の李相日をつくったという事実を。
鳩高生よ!もう一度いいます。就職、進学はじめ自分の選んだ道。目の前のことに一つ一つ夢中になって取り組んでみてください。夢中になって取り組んだ先に、新たな扉があるはずです。そしてその扉は今現在、想像すらしていないものかもしれません。きっとみなさんを最高に輝かせる未来が待っています。応援しています!
次回は、10月1日(水)にアップします。このホームページで会いましょう。
校長室より「9月前半」の鳩高生への応援メッセージ
“プレイヤー”になろう!
鳩高生の皆さん、こんにちは。校長の田中です。高校生活最後の夏休み、充実した日々を過ごせましたか?本日から第2学期が始まり、始業式では「来し方・行く末」について話しをしました。
行く末、それも非常に近い、今日からの2学期にスポットをあててプレイヤーとなってほしいと思います。改めて“プレイヤー”とはどんな人のことか?この言葉の意味することを再確認します。プレイヤーとは文字通り、プレイする人のことです。では、何をプレイするか?それは「物事に主体的に取り組む人」を指します。学校生活で言えば授業にしても、行事にしても、与えられたものを受け取るだけではなく、自分から働きかけて自分の行動に前向きな意味を持たせる人のことです。
部活動を例にしてみましょう。部員はもちろんプレイヤーです。では、マネージャーはどうでしょうか?例えば野球部やサッカー部、バスケットボール部などのマネージャーは、プレイはしません。しかし、部員と一緒に勝利を目指して戦っているという意味では、プレイヤーです。そうです、私が皆さんに勧めるプレイヤーとは、部活動で言えばマネージャーも立派なプレイヤーです。こうした単に応援する人や傍観者ではなく、何かに主体的に関わって自分の役目を果たそうとする人のことです。もちろん応援する人も、その役割からするとプレイヤーと言ってよい人もいると思います。様々なプロスポーツ選手にとってそんな熱心な応援者がいるからこそ力を発揮できるという事実はあります。
こうした熱狂的な応援団も悪くはないのですが、高校生の皆さんは、是非、自分が主体的になって何かを成し遂げる経験をたくさん積んでほしいと思っています。なぜか?人は自分で苦労して何かを成し遂げたり、やり遂げた経験しか、いざという時に自分を助けてくれないからです。その取組は、結果的には成し遂げられなかったとしても本気で向き合って取り組んだ経験は、何ものにも代えがたい貴重な経験となって皆さんの内に少しづつ物質が沈殿するように蓄積していき、少し大袈裟かもしれませんが、皆さんの血肉となっていきます。そしてこの主体的に関わった経験、プレイヤーとして取り組んだ経験が多ければ多いほど、地層で言えば強固な岩盤になります。それと同じように皆さんの自信になっていきます。たくさん失敗してそこから立ち上がる経験であれば、“レジリエンス(精神的回復力、再起力、復元力など)”となります。成功したとか、失敗したとかを度外視してプレイヤーとして無数の挑戦を重ねた人であれば“根拠のない自信”というものになるかもしれません。
そして、できることなら避けたいかもしれませんが、失敗の経験は、もしかしたらかけがえのない財産かもしれません。「失敗は成功のもと」という諺(ことわざ)があります。失敗の原因を見直せば、いずれは成功につながるという意味です。もう少し丁寧にいうと、失敗すれば、その原因を反省し、方法や欠点を改めるのでかえってその後の成功につながることになる。失敗は成功の母ということです。
パナソニックホールディングを一代で築き、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助は、「失敗したところでやめるから失敗になる。成功するまで続ければ成功になる」と言っています。松下幸之助と言ってもピンとこないかもしれませんが、我々の大先輩で一つの時代を築いたといわれる人も多くの挑戦をして失敗を重ねてきたことが分かります。こうした話を受けて鳩高生全員へ向けた願いがあります。これまで話してきたように挑戦には失敗もつきものです。鳩山高校は、生徒一人一人が生き生きと自分の力を発揮できるステージ、挑戦ができる絶好の環境にあると言えます。入学から2年と半年、ここまで共に学校生活を送ってきた仲間です。ですから、この鳩山高校が生徒の皆さんにとって一層、挑戦しやすい、居心地のよい場所に高めていってほしいという願いです。「親しき仲にも礼儀あり」という周囲へのリスペクト、礼儀をわきまえた上で多くのことに挑戦してほしいのです。こうした挑戦が結果として自分の成長、仲間の成長となるような前向きな取り組みになっていくと思います。
誰もが主体的に取り組むことに優しく、誰かの失敗にも優しく、一層、安心・安全な鳩山高校として、生徒一人一人が主体的に取り組む、プレイヤーの集まりとなるように高めていってほしいと思っています。学校を挙げて応援しています。
次回の応援メッセージは、9月16日(火)にアップします。また、このホームページで会いましょう。
本校美術部が制作したアート作品が展示されている埼玉県平和資料館、戦後80年企画、開催中 ♪
本校美術部が制作したアート作品、多くの来館者の前で堂々と羽ばたいています!
今年(令和7年・2025年)は、終戦から80年を数えます。80年という節目の年であることから、歴史を扱う施設等で戦後80年と題する様々な企画が催されています。我が鳩山高校にほど近い埼玉県平和資料館(埼玉ピースミュージアム)でも戦後80年企画が開催中です。そして本校美術部が制作したアート作品が戦後80年企画、「はとに願いを」のメインとなる折り鳩アートとして展示されています。タテ約3.3㍍、ヨコ約4㍍という羽ばたく巨大なアート作品は、来館者に力強く恒久平和を語りかけているようです。そのアート作品がこれです。
現在、この戦後80年企画は、来館者の方にも「本アート作品を構成する折りバト」と同じものを折っていただく案内がされています。入館してすぐの案内窓口前、そして鳩山町内が一望できる展望塔(天気がよく澄み渡った日には東京スカイツリーも見えます!)にも「折り鶴アートに参加しよう!」の案内があります。
「折り鳩アートに参加しよう!」で来館者に折っていただいた鳩は、共に恒久平和が続く未来へと向かい、想いを語り継げるよう、スピンオフ的な作品に広がりつつあります。それが下記左側の写真です。来館者に協力していただき、折ってもらった鳩は、下記右側のメイン展示と共に新たな平和の象徴、新たなアートとなって広がっています。
鳩高生のみなさん、時間を作って埼玉県平和資料館に足を運んでみるのも夏のよき思い出になると思います!
★埼玉県平和資料館 = 埼玉ピースミュージアム
ところ 東松山市岩殿241-113 入館料 無料
開館時間 9:00~16:00(最終入館16:00) 休館日 毎週月曜日
バス・電車 東武東上線 高坂駅西口から川越観光バス 鳩山ニュータウン行きで8分
大東文化大学下車、徒歩5分
校長室より「8月後半」の鳩高生への応援メッセージ
残り2週間の夏季休業、「栄冠は君に輝く」時間は十分にある!
鳩高生のみなさん、こんにちは。校長の田中です。8月5日(火)に開会した今年の全国高等学校野球選手権大会、いわゆる甲子園大会は、雨天順延がなければ今週の土曜日、23日の決勝戦で全日程を終えます。大会の歌である「栄冠は君に輝く」は、暑さ対策のため、開会式の時間を遅らせ、今年は夕刻に流れました。それでも、その爽やかな歌詞とメロディーは健在で、故長嶋茂雄氏ならずとも「永遠に不滅です」と言いたくなるような清々しい空気が球場だけでなく、テレビの前のお茶の間にも伝わったと思います。改めて、“希望を語る素晴らしい歌”だとしみじみ思います。
雲はわき 光あふれて 天たかく 純白の球きょうぞ飛ぶ
若人よ いざ まなじりは 歓呼にこたえ いさぎよし ほほえむ希望
ああ 栄冠は 君に輝く
暑さと言えば、この夏、鳩山町は、日本全国にその名を轟かせました。昨年は全国市町村最年少の町長誕生で多くのメディアに注目されましたが、今年は最高気温です。今月8月5日に鳩山町で観測した気温は、41.4度。同日、群馬県の伊勢崎市は41.8度を記録して国内観測史上最高となりました。41.4度は、全国第2位です。鳩山町内の方が、ある新聞の取材に語っていました。「最高気温で鳩山町の名が挙がるのは誇りではないが、悪い気はしない」と。そのとおりだと感じました。そんな全国からも耳目(じもく)を集める鳩山町がみなさんのホームグラウンドです。どんな分野においても思う存分、善き力を発揮してほしいと思います。
さて、高校野球の甲子園大会。本日8月18日は休養日で、明日、ベスト8に駒を進めた各校が対戦する準々決勝が行われます。今、皆さんの気持ち(マインド)はどんなところにありますか?高校野球を見ていない人にとっても甲子園大会はもちろん、引き続き夏休みは続く、そんな気持ちではないでしょうか。ところが、今週末の23日(土)の決勝戦が終わるとどうでしょう?もしかしたら多くの人が同じように感じるのではないでしょうか。夏休みも残りわずか、ああ、もっと早くあれもこれもしておけばよかった。2学期が始まってしまう!何か憂鬱だ。この夏、あれやこれや、やるぞ!と決意し、まさに希望の歌に聞こえた「栄冠は君に輝く」。同じ歌なのに決勝戦が終わった後の閉会式で聞く「栄冠は君に輝く」は、みなさんの胸にどのように響くでしょうか?何か物悲しく、間近に締切が迫ってくるような、えも言われぬ焦燥感に落ち着かなくなる、という気持ちになったりしないでしょうか?「せめて一週間前に戻りたい」と。
とは言え、8月18日の本日を含めて残り2週間の夏季休業があります。夏休みの予定を立てて今日まで順調にきている人は、引き続き、自分のペースを大切に有意な時間を過ごしてください。かたや、この夏の暑さで予定の半分も出来ていない。暑さもあり昼夜逆転してしまった。また、体調管理という名のもとに2度寝、3度寝と体内時計に変調をきたしてしまいそうな生活が続いてしまったと感じている人は仕切り直しましょう!
★★★
さあこれから具体的なアクションプラン(行動計画)を提案したいと思います。
① 1日を有効に使うために改めて、起床時間、就寝時間を一定に決めて1日24時間にリズムを持たせましょう。
※夏季期間は普段より一層魅力的な映画、スポーツ番組等、深夜の時間帯に放送されたりします。ライブで観たい番組もあると思います。全てとは言いませんが、録画して後で観るなど、体調管理を優先して頭も体も高いパフォーマンスを発揮できる生活リズムを再構築しましょう。
② 本物に触れる!
夏季休業中に是非、してほしいこと№1(ナンバー・ワン)と言っていいものです。まだ、2週間あります。何でもいいのですが、比較的身近にある美術館や博物館に行くことも比較的手軽に本物に触れる機会となります。小さな美術館の場合、手に届くところに作品が展示されているかもしれませんが、もちろん触ってはいけません。そこに行って作品等を鑑賞することが触れることです。入館料がかかりますが、例えば、小さな美術館(入館料、数百円のところもあります)でも高名な画家の作品が展示されていたりします。「教科書で習ったあの人だ!」という方の作品に出逢うこともできるかもしれません。また、プロ野球観戦に行って、遠目でもよいので本物のプロ野球選手の躍動感あるプレーを観ることも本物に触れることです。その他、多くの本物があります。是非、時間を作って、足を運んで本物に触れてみてください。感動や勇気、自分も頑張ろう、という前向きな気持ちをもらえると思います。これらは長い時間をかけて、みなさんの内に蓄積していき、この蓄積の積み重ねがみなさんの人生の財産になります。「根拠のない自信」という言葉がありますが、こうした本物に触れた経験は確実に「根拠のない自信」の構成要素になるはずです。もう一度、言います。何でもよいのです。普段とは違う夏休みだからこそ、かつ高校生活最後の夏休みだからこそ、本物に触れる機会をつくってほしいと思っています。
③ 言語化してみる!
今日一日の中のトピック(一つの話題)的な場面を切り取って言語化してみる。日記を書く習慣のある人はいいですね。書くことによって思考が整理されると思います。普段、あまり言語化にトライしていない人は、パートタイムの日記というくらいが、肩の力が抜けてよいと思います。1988年、ソウル五輪シンクロ・デュエットで銀メダルを獲得したスポーツ心理学者の田中ウルヴェ京(みやこ)さんは、「自分の感情の言語化」を勧めています。「言語化することによって自分のこころの状態を観察し、それに気づく」、メンタルヘルスの第一歩として「自分の感情を言語化しよう」と言っています。思考の整理としての言語化も同時にできると思いますが、田中ウルヴェ京さんお勧めの「自分の感情の言語化」を意識してやってみませんか?
人は「こころ」に気を配ることで「こころ」の健康を維持増進することが可能で、その「こころ」のトレーニングの入り口が自分との対話(セルフトーク)だと田中ウルヴェ京さんは言います。「今、私の心臓はドキドキしていますか?」、「今朝はどんな気分ですか?」などなど。こうした「こころ」の中に起こってくる感情を、その場で実況中継するつもりで観察してみるのだそうです。例えば、「私はついさっき電車の中で足を踏まれて。ちょっとイラっとしています」とか。こうして自分の感情を言語化することで「イライラした」、「失敗した」ということを自分で客観視でき、そこから、自分はどう行動するかという課題に結びつけることができるというのです。
ポイントは、きちんと自己客観視をすることにあると言います。そこから、自分はどう行動するのかという課題に結びつけることができるのだと。自分の感情を言語化して認めることで、「じゃあ、どうしますか?」と自分に問いかける。思考や感情をどうにかしようとするのではなく、行動のほうに視点を移すのだそうです。何か行動に移す必要がある時、「比較的涼しい朝のうちに、行動しよう」も一つの方法だと思います。面接練習をしたが、しっくりこなかった、であれば、「今度は家の人に面接官をしてもらおう」、「先生に面接官をしてもらおう」、など前向きな行動、解決方法に繋がるのではないでしょうか。さあ、自分の感情を言語化してみて、そこから自分はどう行動するかという課題に結びつけて、2週間を有意義な時間にしてほしいと思います。応援しています。
次回の応援メッセージは、9月1日、第2学期始業式の日にアップします。このホームページで会いましょう!
校長室より「8月前半」の鳩高生への応援メッセージ
そして、私たちは“戦慄”する!
鳩高生のみなさん、こんにちは。校長の田中です。夏季休業に入ってから一層の猛暑。暑さ対策に気をとられているうちに気づけば、本日から早くも8月。1学期の終業式後、14日目、2週間となります。月日が経つのは何と早いこ とか、何はさておき、少しというか、かなり大袈裟かもしれませんが、私はこれに「戦慄」しました!
さて今回の応援メッセージは、表題のちょっと怖そうな語句について少しだけ深掘ってみたいと思います。さっそく「戦慄」、何と読みますか?
☆彡
これは「読みにくい漢字」の一つとされ、とある調査では「3人に1人が読めない漢字」といわれています。・・・、そうです。「せんりつ」と読みます。読めた人、素晴しい!ドヤ顔せず、冷静にかつ謙虚な姿勢を保ちつつ、自分の語彙力(ごいりょく)を褒(ほ)めてあげてください。読めた人も惜しくも読めなかった人も、どこかでこの漢字と出くわしているかもしれません。「戦慄の貴公子」…は、ちょっと古いですか。かつてマイケル・ジャクソンとともにスター街道を駆け上ったプリンスのアルバムの日本向けタイトルです。今は「アルバム」と言っても伝わらないですね。「あの丸い円盤みたいな、・・・。何でしたっけ?AB・・・」、「CD!」。今となってはCDもオワコンですね。今は、ストリーミング?とかですか。話が脱線してしまいました。「戦慄」に戻しましょう。そうそう、生徒の皆さんが触れているかもしれないのは、「戦慄のエチュード」でしょうか?
「戦慄」とは、広辞苑 第七版/岩波書店によると「恐ろしくて、おののきふるえること。おそれて身ぶるいすること」とあります。強い恐怖や驚き、あるいはそれによって体や心が震えるような状態を意味しますから、用法例としては、ホラー映画やスリラー小説などを想像するとイメージしやすいと思います。「戦慄の事実」、「戦慄の映像」、「戦慄すべき事実が発覚した」、「その話を聞いて戦慄がはしった」、「彼の冷静な目に戦慄を覚えた」などが一般的な「戦慄」正しい用法例といえます。
上記のような一般的な用法に加えて一部のケースでは、戦慄は、感動に近い感情の震えとして使われることもあります。音楽や芸術作品などに対して「深い感動とともに戦慄を覚える」というような使い方です。この規格外に凄い用法例に出会いました。BSテレビに『3行、読んでみた』、という番組があります。CMを入れても、ほんの5分足らずの番組ですが、様々な大手の書店の店員さんたちがナビゲーターとなってお勧め本、感動した本を紹介する番組です。ある回で小川 哲(おがわ さとし)著、『君のクイズ』という本を紹介していました。ネタバレになりますが、ストーリーは次のようなものです。主人公は、あるクイズ番組に出場し、ファイナルステージに進出します。優勝をかけた最後の問題で、まだ一文字も問題が読まれていない中、対戦相手が正解して優勝を果たします。なぜ、正解できたのか?主人公は、その真相を解明すべく、決勝戦で出題された問題を一問ずつ振り返る。その過程で主人公自らの人生も振り返ることとなる。そして、単なるクイズの強さだけでは説明できない真相が見えてくる。振り返っていく中で主人公が幼少期に読んだ本を思い返すシーンもある。そうした生きてきた経験値がクイズの強さに繋がるということにも気づく。そしてつぶやく。
『クイズに答えているとき、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。僕らちが生きるということは、金網を大きく、目を細かくしていくことだ。今まで気づかなかった世界の豊かさに気づくようになり、僕たちは戦慄する。戦慄の数がクイズの強さになる。』
これはクイズに限らず、私たちは日々、著者、小川哲さんも言葉を借りれば、自分という金網をすくい上げて生きているのではないでしょうか。日々様々なことを学ぶことによって、この金網の性能を少しずつよいものにしていかないと世の中に順応して生きていくことができないのだと思います。金網の性能をよくするとは、著者も言葉を借りれば、金網を大きくしていくこと。つまり学校での勉強はじめ様々な知識や技能、経験を積むことによって、この世界の多くの有益なこと、ものに触れ、感性を磨き、自分自身が成長していくこと。さらに金網の目を細かくしていく。それまでザルで、見たり聞いたりして学んだつもりが、大きな網の目から抜け落ちてしまって身に付くことがなかった状態から、金網の目を細かくしていくことによって、より多くのことをキャッチできるようになる。特に心に響くような事象をしっかりキャッチして世界の豊かさに気づく。そのことによって無知な自分から一歩成長できる。そんな震えるような感動を著者に倣(なら)って「戦慄」と表現してみましょう。
1学期の終業式でこんな話をしたことを覚えていますか?
進路実現について、しっかり取り組む。また、普段できない心を豊かにするような時間を持つ。「やり切った!」、「楽しかった!」そんな夏休みにしてほしい。そして2学期、元気な顔を見せてほしい、という話でまとめました。鳩高生のみなさん、この夏、是非「戦慄」してほしい。感動に近い感情の震えを感じるほどの「戦慄」を体感してほしい。日常の学校生活とは違った時間を刻む夏休みは最高の機会かもしれません。生徒のみなさん全員に共通するテーマは、「自分自身の進路に真剣に向き合う」ことだと思います。それを日々考え、深掘って、深掘って、深掘ることによって「戦慄」できるかもしれません。今まで気づかなかった世界の豊かさに触れてほしいと思います。そんな夏を「やり切った!」、「楽しかった!」と表現して鳩高生のみなさんに伝えました。日々、みなさんの健闘を応援しています。
次回の応援メッセージは、学校閉庁日(サマーリフレッシュ・ウィーク)明けの8月18日(月)にアップします。このホームページで会いましょう!
校長室より「7月後半」の鳩高生への応援メッセージ
「樽の中のワイン」の話
~ 一人一人の力を結集して、学校の力を高めよう!~
鳩高生のみなさん、こんにちは。校長の田中です。
先週末、うれしいニュースが飛び込んできました。本校美術部が、埼玉ピースミュージアム(埼玉県平和資料館、東松山市岩殿241-113)の戦後80年企画、「はとに願いを」のメインとなる展示物の制作を担当したことを伝えるニュースです。制作したタテ約3.3㍍、ヨコ約4㍍に及ぶ大きな鳩は、鳩山町、東松山市などの小中高、特別支援学校の児童・生徒が作った約3000の折りハトを大きなキャンバスに結集させた作品です。実物を目の前にすると息をのむほどの見事な作品と言ってよいと思います。埼玉ピースミュージアムは入館料、無料です。是非、足を運んでもらえたらと思います。美術部のみなさん、立派です!お疲れ様でした。
☆彡
さて今回は、ヨーロッパを舞台にした昔話で、「樽の中のワインが水になった」話です。何十年も村のためにつくした長老が故郷に帰ることになりました。そこで村人たちは感謝の気持ちとして何かプレゼントをしようと話し合い、皆でワインを一瓶(ひとビン)ずつ持ち寄り、“樽一杯”のワインを贈ることにしました。さっそく村の広場に大きな樽を置いて、村人それぞれがワインを持ち寄って、みんなで樽一杯にしました。
いよいよ長老が故郷に帰る日になりました。大きな樽のワインに長老は、たいそう喜びました。長老は集まってくれた皆で乾杯しようと、このワインを一杯ずつ飲むことにしました。しかし、どうしたことだろう。樽から注がれた液体はまったくワインの味がしない。まるで水のようだった。長老へのプレゼントを企画した者たちは長老の手前、戸惑い、恥じ入った。その場は、突き刺すような静寂が支配した。
しばらくして隅にいた一人の村人が立ち上がって言った。「実は・・・、私はワインを入れませんでした。みんながワインを入れるだろうから私の一瓶分くらい水を入れたって誰にも分からないだろう、そう思ってしまったのです」。すると間髪入れず、別の男が立ち上がった。「実はおれも同じことを・・・」。その後、次々と「私もです」、「俺もです」と言いだし、とうとう村人全員が同じことをしていたことが分かった。
この話から私たちが学ぶべき教訓は、「自分一人くらい・・・しなくたって・・・」が広がると集団・組織は、崩壊(ほうかい)してしまうということです。鳩高生のみなさん、今日、明日はZOOMを使ってオンライン形式で学ぶ機会があります。普段の顔を突き合わせている授業とは違い、「自分ひとりくらい、・・・」という気持ちがどこかにありませんか?今一度、自分を振り返ってみてください。オンライン形式だからこそ、集中して臨まないと“置いてけぼり”をくってしまうかもしれません。「自分ひとりくらい・・・」という気持ちは誰でも持つものかもしれません。逆を言えば、何かの折、もし、「自分ひとりくらい・・・」と考えたなら、同じようなことを考えている人がたくさんいる、と考えた方がよいでしょう。私たちにとって注意すべき教訓です。
村人たちの話に戻ります。仮に「自分ひとりくらい・・・」という気持ちが頭をよぎったとしても、村人一人ひとりが、「もしかしたら『自分くらい…』、と考える人がいるかもしれないけど、自分は皆で決めたルールを貫き、ワインを入れよう!」と考えたら結果は大きく違っていたのではないかと思います。鳩高生のみなさん、そんなみなさんであってください。鳩高生、一人一人の力を結集して、鳩高の力を一層、高めよう!
間もなく夏休みを迎えます。暑い夏が予想されます。「今日一日くらい・・・」いいか、という日があって全然よし、と思いますが、これが何日も連続すると危険信号です。40日など、あっという間に終わります。もっと大袈裟(おおげさ)にいうと「人生とは、『一日くらい・・・』という今日の積み重ね」だと思います。9月1日、透き通るような笑顔で登校できるよう今日から、今から、この時間を大切に過ごしてください。
次回の応援メッセージは8月1日(金)にアップします。このホームページで会いましょう!
校長室より「7月前半」の鳩高生への応援メッセージ
前を向こう、人を信じよう、希望を見出そう!
~「鬼滅の刃」が7/17まで、日をおいて全七夜、特別放送されています ~
鳩高生のみなさん、こんにちは。校長の田中です。1学期を締めくくる7月になりました。今回は、数年前、日本中を席巻した「鬼滅の刃(きめつのやいば)」が再び光を放っている現状を受け、そのクライマックスを使って、みなさんにエールを送りたいと思います。
ところで鬼滅の刃、空前の大ヒットの理由はなんだったのだろうか。かなり刺激的なストーリーはもとより、大正時代というちょっとレトロな時代設定による人の描かれ方などに魅かれたり、主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)をはじめとする魅力と個性あふれるキャラクターに子どもから大人まで皆、心を奪われてしまった、ということではないでしょうか。いわゆるカッコいい絵から一転してコミカルな絵に変わるシーンが随所に散りばめられています。これに小さな子どもたちは夢中になっていました。
さて、第一話。山を奥へ中へと入った地に住む竈門家。悲しいシーンは省く。竈門炭治郎は、鬼と化し狂暴化しつつある妹の禰豆子(ねずこ)を背負って走る!山を降りて禰豆子を街医者に救ってもらおうとは雪のふる山道を必死で走る。街まで気が遠くなるほど距離があるというのに力つきそうな自分。体と気持ちがちぐはぐで背負った禰豆子が背中から抜け落ちてしまう。そんな2人に俊敏な動きの一人の男が近づく。鬼殺隊(きさつたい:世にはびこる人食い鬼から人々を守ってきた鬼狩りの剣士の組織)の柱(はしら:鬼殺隊の最高位に位置付けられた実力者の総称。9名いる。)の一人、冨岡義勇(とみおか ぎゆう)である。冨岡は炭治郎と共にいる鬼と化した禰豆子に出くわし、それを捕らえ、今、まさに殺さんとしている。自分すらことの次第をよく理解しきれていない中、必死に訳を話す炭治郎に冷たく言い放つ。「簡単な話しだ。傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった。人喰い鬼はそうやって増える。」斧という武器を持つも冨岡との力の差は歴然。正座して涙ながらに命乞いする炭治郎に「親兄弟だろうが、鬼を守るなどもってほか」、冷えた目でことを見守っていた冨岡が感情をあらわにする。「生殺与奪の権(せいさつよだつのけん)を他人に握らせるな!みじめったらしく、うずくまるのはやめよ。(中略)怒れ(おこれ)!許せないという強く純粋な怒(いか)りは手足を動かすための揺るぎない原動力となる。・・・」そう言いながら冨岡は禰豆子に刀を突き付ける。
「やめろー!」炭治郎は足元にあった石を握りしめて冨岡に向けて力一杯、投げる。間合いを保って走りながら木の陰から石を投げる。次の瞬間、冨岡に襲いかかった。「感情に任せた単純な攻撃、愚か!」と冨岡は刀の柄(つか)で炭治郎の背中を一撃。気絶した炭治郎が斧を持っていないことに気づいた富岡。はっと顔を上げるとクルクルと回転して勢いのついた斧が冨岡の頭をかすめて背にした大木に突き刺さった。瞬時に頭を傾けなかったら冨岡を亡き者にしていた。
冨岡義勇はつぶやく。「木の陰に隠れる直前、こちらに石を投げ、と同時に上へ斧を投げた。丸腰であることを悟られないように振りかぶった態勢で手元を隠す。俺に勝てないことが分かっていたからだ。自分が切られた後に俺を倒そうとした!こいつは・・・。」凄すぎる。第一話のハイライトシーンと言ってよいと思う。こんなことが出来る筈(はず)がない、とおそらく私の前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ:前頭前野とも。複雑な認知行動の計画、適切な社会的行動の調節に関わっているとされている。)では理解しているのだろうが、いや、この若き隊士、炭治郎なら…できるかも!?沼(ぬま)った。改めて鬼滅の刃が大ヒットした理由の一つは、様々なシーンに凄いと感じたのは私だけではなかったどころか、膨大な数の人々がその凄さに魅せられてしまったからだと思う。
★ ☆彡 ★
7/17の第七夜は、柱稽古「柱結集編」とのこと。まだ先は長く、興味の尽きない物語は更に深まっていきます。そして、ここからは最終回のクライマックスのネタバレになることをご容赦ください。今回のタイトルに迫りましょう。
全ての人喰い鬼をまとめる頭領の鬼舞辻無残(きぶつじむざん)は、束になって襲いかかってくる柱を核とした鬼殺隊の攻撃に苦戦し、鬼の唯一と言ってよい弱点、陽の光によって肉体が滅びる寸前に物語はクライマックスを迎えます。ところで、この鬼の親分、鬼舞辻無残。普段は人間の姿をして妻と子ども、家族をもってよき父親を演じて生活しています。普段から悪魔のような姿をしていれば人を喰う鬼と分かりやすいのですが、その鬼舞辻無残は、なびいた髪に色白のイケメンという設定が鬼滅の刃のファン層を広げたことは想像に難くありません。
不死身で無敵を誇った鬼舞辻無残は、自分が滅びゆくことは止められないことを悟り、竈門炭治郎の肉体に無残の永遠で不滅の想いを託し、炭治郎を最強の鬼にしようとします。炭治郎はスターウォーズ的に言えば、ダークサイドに侵されつつも、人間らしい心を取り戻そうと自分自身と必死に戦っています。人間らしい心と鬼の心をさまよう炭治郎に鬼舞辻無残が語りかけます。「前を向くな、人を信じるな、希望を見出すな」と。今回の応援メッセージのタイトルは、今際の際(いまわのきわ)の鬼舞辻無残の渾身(こんしん)の言葉を真逆にしたものです。
「前を向こう!人を信じよう!希望を見出だそう!」
何か勇気が湧いてくる言葉ではないでしょうか。「前を向こう」。そう、どんな時も前を向いて事に対しましょう。「人を信じよう」は、後ほどにします。そして、「希望を見出そう」。みなさんが目標としたり、憧れとしている人のほとんどは、自分の選んだ道に希望を見出し、努力を続けた人だと思います。みなさんも日々の小さなことから進路実現という大きな目標まで「希望を見出して」努力し続けてほしいと思います。
最後に「人を信じよう」について。基本、人、クラスメイトや同級生を信じましょう。ただ、昨今、注意が必要です。人を信じたがゆえに詐欺にあってしまうことがしばしば報道されています。特殊詐欺の「受け子(うけこ)、出し子(だしこ)」などがその例です。確信犯もいますが、法に触れるとは知らず、信じたがゆえに犯罪に巻き込まれる被害が後を絶ちません。詐欺は、ほんの一例です。人を信じつつ、同時に十分、人を見極めましょう。その際、一人では判断できないことが多いと思います。家族、友人、先生等、周囲の人のアドバイス、助けを借りてください。生活をしていくうえで安心・安全が絶対です。自分を大切にして日々、自分を高めていきましょう。応援しています。さあ、全集中して7月の学校生活を充実したものにするとともに学校生活を楽しもう!
★ 次回の応援メッセージは、7月15日(火)にアップします。このホームページで会いましょう!